50代の女性に多いと言われている“空の巣(からのす)症候群”をご存知ですか?
進学や就職によって子どもが家を独立した後、何もする気が起きず無気力になってしまう現象を、ひな鳥が巣立った後の空っぽになった巣に例えて“空の巣症候群”と呼ぶそうです。
私には現在26歳の息子と23歳の娘がいるのですが、息子は3年前からひとり暮らしを始め、娘も去年大学を卒業して家から独立しました。子どもが無事に成長して安心、なんて思ったのは束の間。
2人の自立を節目に、実は私も“空の巣症候群”のような状態に陥ってしまったんです。
娘が社会人になって家を独立した去年。
25年間の私の子育てにピリオドが打たれ、やっと一息つけるとホッとしたのと同時に、これからは自分の時間を大いに楽しめる!と浮かれていました。
平日は家事を少し手抜きして、時間を気にせずTVを観たり習い事に通ったり、週末は主人と2人きりでランチに行ったり小旅行をしたり…。子どもたちが大人になったらやりたいと思っていたことがたくさんありました。
独身時代以来と言っても過言ではない、自分だけの時間が持てることにワクワクし、以前から興味があった水彩画の教室に通うことに。
3ヶ月がたった頃、水彩画教室で新しい友達もできたし、思う存分に好きなことをする毎日で楽しいはずなのに、思い描いていた日々と何かが違う…と、なんとも言えない物足りなさを感じていました。
その“物足りなさ”の理由がわからず、楽しいながらも、なんとなく落ち込んだ日々を送っていました。
そんなある日、私の4つ下の妹が、夏休み中の高校生と中学生の2人の娘(私にとっては姪っ子)を連れて家に遊びに来ました。
久しぶりに姪っ子たちに会えるのが嬉しくて、その日はお菓子やジュースを張り切って用意しました。姪っ子たちと話しているとあっという間に時間が過ぎ、楽しかった分、3人が帰った後はなんだかとても寂しくなりました。
その日の夜、主人に妹たちが遊びに来たことを話しているときに、私はふと「いいな、妹は家に子どもたちがいて…」と漏らしていました。その自分のひと言で、私が何をしていても“物足りない”気分だったのは、子どもが身近にいない寂しさからだったのだと思いました。
そして、その週の水彩画教室の帰り。教室で仲良くなった2つ年上の女性にお茶に誘われ、教室近くのカフェに2人で寄りました。彼女は、息子と娘が5年前に独立しており、家族構成も家庭環境も私とよく似ていました。
彼女ならわかってくれるかもしれないと思い、子どもが独立してから何をしていても物足りなくて寂しい、ということを思い切って話してみました。
すると、彼女も同じような経験をしたそうで、それは“空の巣症候群”だと教えてくれたのです。
彼女は、“空の巣症候群”の改善には、3つの方法が効果的だと、雑誌で読んだのだそうです。
それはこのような内容でした。
彼女は、この3つのことを1つずつ考えてみたそうです。
1つ目の「夫婦関係を良好にする」というのはどうもピンと来なく、夫との関係が変わったからと言って、子どもたちが手離れした寂しさを解消できるとは思えなかったとのことです。
2つ目の「仕事にうちこむ」というのは、試しにパートを初めてみたそうですが、自分の寂しい気持ちを埋めることとは少し違い、長続きはしなかったそうです。
そして最終的に、彼女が特に興味を持ったのが3つ目の「ボランティア活動をする」ということでした。
元々「誰かの役に立ちたい」と思っていた彼女は、早速、身近なボランティアについて調べ始めたんだそう。 どうせ始めるならば人の役に立つのはもちろんのこと、“誰かの喜びが具体的にわかるような事がしたい”と彼女は考えていたようです。
「誰かの役に立っているという実感が得られれば、気持ちも前向きになれるんじゃないか、と、あれこれ探す日々が続いたんだとか。
そんな中、「チャイルド・スポンサーシップ」という支援プログラムにたどり着き、これだと思ってやり始めたと私に話してくれました。
彼女が教えてくれた「チャイルド・スポンサーシップ」とは、子どもの貧困問題を世界23カ国で支援活動しているプログラムのことでした。
特徴は、支援している地域の子ども1名と定期的に手紙のやり取りができたり、その子の成長報告書が届くこと。しかも、実際にその子に会いに行ける「支援地訪問ツアー」というものもあるそう!
支援プログラムというと、お金だけ支援して終わり というイメージがあったので、そんな風に支援地 訪問をして、子どもたちの生活にリアルに 踏み込めるというのが、面白いなと興味を持ちました。
一方で、寄付はと言うと、お金持ちの人や国際交流に意識の高い人がやるものというイメージがあったので、自分がいざ始めるには少し引け目を感じたのが本音です。
でも「チャイルド・スポンサーシップ」を始めれば、子どもたちと繋がったり、成長を見守ることで、今の欠乏感を埋める手段になりうるかもしれないなと思い、やり始めることにしました。
そして私がサポートする子は、カンボジアのラチェナちゃん(6才)に決定しました。
会ったことはないけれど、「チャイルド・スポンサーシップ」からもらった写真をみると、やっぱり親しみがわきます。まん丸な瞳が可愛い女の子です。
そして「チャイルド・スポンサーシップ」を開始して半年が経ったつい先日。なんと嬉しいことに、ラチェナちゃんからはじめての手紙が届きました…!
手紙は、ラチェナちゃんの母国であるカンボジアの言葉、英語訳、そして日本語訳の計3通が同時に届きます。私は英語が得意でないので、「チャイルド・スポンサーシップ」がきちんと日本語訳をつけてくれるのは助かりました。
直筆の手紙というのは、やはり、何とも言えない温かみがあり、遠くに住むラチェナちゃんが身近に感じられました。
文章中の沢山の「ありがとう」という言葉から、「チャイルド・スポンサーシップ」を始めて本当に良かったなと思いました。
この感動が消えないうちに、さっそく私もお返事を書くことに!
子どもへ送る手紙を書くときは、英語か日本語を選ぶことができます。日本語で書く場合は、「チャイルド・スポンサーシップ」が英訳をつけて返信してくれるそう。
いつもの私なら迷わず日本語を選ぶところですが、英語の方がラチェナちゃんに気持ちが伝わる気がしたので、30年ぶりに英語辞書を引きながら、英語で手紙を書くことにチャレンジしています。
手紙の隅には習っている水彩画で季節の花を描いたりして、日本の四季をラチェナちゃんにも伝えたいと思います。
「チャイルド・スポンサーシップ」を始めたおかげで、いつの間にか“物足りなさ”を感じないようになっていたことに気がつきました。
やっぱり、自分の生きがいや楽しみを見つけるって、いくつになっても大切なことですね。
「チャイルド・スポンサーシップ」を始めたおかげで、今まで関心がなかったことにも興味を持つようになり、世界が広がりました。ラチェナちゃんと手紙で会話するようになってから、国際交流や環境問題が他人事ではないと思えるようになったんです。
それに、もっと上手に英語で手紙が書けるようになるよう、英会話スクールに通うことも思案中。いつか「支援地訪問ツアー」に参加して、ラチェナちゃんに会いに行くことが今の私の目標です。